改正物流効率化法でCLO(物流統括管理者)を設置する企業が増えているが、「CLOをどう組織に組み込むか」の答えは一つではない。既存の物流組織を統合して新本部を作る会社もあれば、グループ物流会社の社長にCLOを兼ねさせる会社、グローバル統括組織に据える会社、外部から招聘する会社もある。本稿は、国土交通省提言『物流統括管理者(CLO)に期待される姿』および経済産業省『CLO取組事例集』、各社の公開情報をもとに、CLO設置の組織モデルを5類型に整理し、SUBARU・日野自動車・ダイキン工業・三菱食品・花王という先進企業の体制を解剖する。事例を「横断テーマ」で読むCLO取組事例 完全解読に対し、本稿は「組織設計の選択肢」という縦軸で読み解く。なお、以下の各社記述は提言・事例集等に公表された情報の要約・引用であり、CLO Careerが各社と直接の関与を持つことを示すものではない。

なぜ「組織モデル」で先進事例を読むのか

CLOを設置するという意思決定の本質は、「物流の最高責任を、既存のどの組織・誰に、どの権限とともに置くか」という組織設計の問題である。同じ『CLOを置いた』という結果でも、物流本部を新設してその長を充てるのか、既存役員に兼任させるのか、外部から招くのかによって、機能の仕方も、要する時間も、人選の難易度もまるで違う。

先進企業の事例を「業界」や「取り組み内容」で並べるだけでは、自社が採るべき道は見えてこない。むしろ「どの組織モデルを選んだか」で整理し直すと、自社の規模・物流の分散度・人材の有無に照らして、どの型が現実的かを判断できる。以下では代表的な5類型を、それぞれを体現する企業の体制とともに見ていく。各社の選任時期・体制の記述は国交省提言 p.21-25 および各社公開情報に基づく。

類型① 本部新設・専任統括型 — SUBARU

最も分かりやすいのが、分散していた物流機能を一つの本部に束ね、その本部長にCLOを兼ねさせる型だ。全体最適を一気に進めたい企業に向く。SUBARU自身のプレスリリース(2025年2月7日付)および国交省提言 p.20 の記述によれば、SUBARUは2025年4月(2025年4月1日付)に分散していた物流組織を統合する「物流本部」を新設し、本部長(執行役員CLO・物流本部長 村田眞一氏)がCLOを兼任している。電動化など自動車の変革期に対応するため、部分最適から全体最適への転換を目指した経緯が示され、他社製造業の物流専門家や物流事業者のオペレーション経験者をキャリア採用で補強している点も記載されている。

  • 向いている企業──物流機能が部門・拠点に分散し、全体最適の司令塔が不在の企業。
  • 要点──組織の物理的統合と権限集約をセットで行うこと。本部新設だけでは機能しない。
  • 留意──統合直後は人材が不足しがち。外部からのキャリア採用での補強が現実的。

類型② グループ物流会社社長兼任型 — 日野自動車

すでにグループ内に物流子会社を抱えているなら、選択肢は変わる。その子会社の社長に、親会社のCLOを兼ねさせる手だ。国交省提言 p.21 によれば、日野自動車は2024年2月(2024年2月1日付)にCLOを設置し、CLOがグループ物流会社「日野グローバルロジスティクス」の代表取締役社長を兼任していると紹介されている。当日オーダーの締め時間を17時から16時へ短縮した取り組みでは、販売会社との合意形成を「トラックを待たせない」方針で進めたとされ、物流子会社社長単独では難しい意思決定が、CLOという立場を得たことで可能になった経緯が記録されている。

  • 向いている企業──実オペレーションを担うグループ物流会社を持ち、その経営層に物流知見が集約されている企業。
  • 要点──子会社社長の「執行」の立場に、親会社CLOの「経営参画・全社調整」の権限を重ねる点にある。
  • 留意──兼任者が全社の部門間トレードオフを裁定できる権限を、親会社側で正式に持つことが前提。

類型③ グローバル統括本部型 — ダイキン工業

拠点が世界に散らばる企業では、CLOの置き場所はおのずとグローバル統括組織になる。国内外のロジスティクスを束ねる本部に、物流担当役員=CLOを据える形だ。報道(LNEWS『物流変革は経営そのもの ダイキンの飽くなき挑戦』)および同社公開情報によれば、ダイキン工業は物流担当役員がCLO(物流統括管理者)に任命され、物流本部が事務局となって各部門の関係者が課題を持ち寄る体制をとっている。物流本部は日本・海外のロジスティクス機能統括、地域別物流戦略の企画立案、世界各地域の物流拠点網・輸配送ネットワークの企画、物流設備の導入・運用、先進技術の活用検討などを担うとされる。

  • 向いている企業──海外売上比率が高く、地域横断でのロジスティクス最適化が経営課題になっている企業。
  • 要点──物流本部を「事務局」として全部門を巻き込む横断運営。役員級の統括者が旗振り役を担う。
  • 留意──グローバルでは各地域の自律性とのバランス設計が要る。本社集権と現地裁量の線引きが論点。

類型④ 段階的専任化型 — 三菱食品

いきなり専任CLOを置くのではなく、SCM統括職を先行して創設し、数年かけて専任・経営幹部化していくモデルである。提言 p.23 によれば、三菱食品は2019年にSCM統括役職を創設し、2021年4月に専任化、2025年4月にCLOを設置したとされる。食品卸という業界特性から可視化アプローチに重点を置く取り組みが紹介され、提言で引用される「CLOの進化の3方向」(コスト管理から企業価値向上へ、3価値の同時実現、個社最適からサプライチェーン全体最適へ)が、同社CLOの示唆として整理されている。

  • 向いている企業──物流統括の必要は認識しているが、一足飛びに役員級CLOを置く人材・体制が整っていない企業。
  • 要点──統括職→専任化→経営幹部化という段階を、計画的にロードマップとして設計する。
  • 留意──段階を踏むぶん時間がかかる。特定荷主の選任期限から逆算した進行管理が必要。

類型⑤ 外部招聘+多層モニタリング型 — 花王

社内に適任者がいない場合に、物流・運送の実務経験者を外部から招聘してCLOに据えるモデルである。提言 p.24 の記述によれば、花王は運送事業の経験者を外部招聘してCLOに据えたとされ、取組体制は「①モニタリング」「②3つの判断基準の改善とその実効性確保」「③特定荷主としての義務遂行」の3階建て構造として紹介されている。工場・物流拠点で予約システムを導入し、発荷主・着荷主の両側面でモニタリングを実施している点も明記されている。

  • 向いている企業──社内にCLO要件を満たす人材がおらず、即戦力を外部に求める必要がある企業。
  • 要点──招聘した責任者が機能するための、データに基づくモニタリング体制を同時に構築する。
  • 留意──外部人材の定着には、権限・処遇・社内協力体制の整備が不可欠。招聘して終わりにしない。

なお、提言にはこれら4社に加え、中堅規模メーカー(アース製薬)の事例も収録されている(p.25)。中堅・中小規模であっても、年度取扱貨物9万トンの閾値を超えれば特定荷主として同等の義務を負う(出典:物資の流通の効率化に関する法律 第45条/同法施行令〔基準重量9万トン〕)。自社が該当するかの確認は特定荷主の一覧・番号はあるのかを参照されたい。

自社はどの型か — 選択の4つの判断軸

5類型は排他的ではなく、組み合わせや移行もあり得る。自社に適した型を見極めるには、次の4つの軸で現状を点検するとよい。

  1. ①物流機能の分散度──部門・拠点に分散しているなら本部新設型(SUBARU型)が、すでに物流子会社に集約されているなら社長兼任型(日野型)が近い。
  2. ②事業の地理的広がり──海外比率が高くグローバル最適が課題なら、グローバル統括本部型(ダイキン型)を検討する。
  3. ③CLO要件を満たす人材の有無──社内にいれば段階的専任化型(三菱食品型)、いなければ外部招聘型(花王型)や業務委託が現実的。
  4. ④選任期限までの時間──期限が迫るなら外部招聘で速やかに据え、並行して内部育成する。時間があれば段階的専任化が無理がない。

いずれの型でも共通するのは、CLOが「経営に参画する管理的地位」として権限と処遇を伴って設置されてはじめて機能する、という点である。役職と物流責任者・部長層の責任分界の整理は物流責任者の職務記述書(JD)と等級定義、社外CLO・業務委託という選択肢は社外CLO・業務委託CLOガイドで扱う。

CLO Career の支援

どの組織モデルを採るにせよ、設計と人選はセットである。CLO Career は、CLO(物流統括管理者)およびその直下層に特化したエグゼクティブ・プラクティスとして、体制設計から招聘までを守秘契約のもとで支援している。

  • 組織モデルの選定支援──自社の分散度・地理的広がり・人材・期限を踏まえた組織モデルの壁打ち。
  • CLO・物流統括責任者の招聘──本部新設・外部招聘いずれの型でも、要件を満たす人材を手配。
  • 業務委託CLO・顧問──段階的専任化や過渡期の橋渡しとしての社外人材の活用。

改正法の要件とCLO像の全体は改正物流効率化法とCLO選任義務 完全ガイド、役職そのものの定義はCLO(物流統括管理者)とはを参照されたい。企業のご相談は企業向けページから受け付けている。

References

  1. 国土交通省『物流統括管理者(CLO)に期待される姿』令和8年3月(先行事例 p.21-25) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001992615.pdf
  2. 経済産業省『CLO取組事例集 — 物流改革の実践と成果』令和8年2月 https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/CLO_collection_of_cases.pdf
  3. LNEWS「物流最前線/物流変革は経営そのもの ダイキンの飽くなき挑戦」(2024年11月) https://www.lnews.jp/2024/11/q1106603.html
  4. ダイキン工業株式会社 役員一覧・会社情報 https://www.daikin.co.jp/corporate/overview/summary/directors
  5. 関連姉妹記事「CLO取組事例 完全解読」(/topics/clocases)
  6. 関連姉妹記事「特定荷主の一覧・番号はあるのか」(/topics/specified-shipper-list)
  7. 関連姉妹記事「物流責任者の職務記述書(JD)と等級定義」(/topics/logistics-leader-jd)