CLO(Chief Logistics Officer/物流統括管理者)は、企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する経営幹部役職である。同名のChief Legal Officer(最高法務責任者)とは別概念であり、本稿で扱うのは物流・SCM領域のCLOである。2024年に成立した改正物流効率化法(2026年4月全面施行)により、一定規模以上の荷主企業に対してCLOの選任が義務化された。本稿は、CLOの定義、役割と職責、そして採用・育成の現実的なステップを総覧する。

CLOとはどのような役職なのか?

CLOは、Chief Logistics Officerの頭文字をとった役職で、日本語では物流統括責任者、もしくは物流担当役員などを指す。

似た略称として、Chief Legal Officerの略で「最高法務責任者」を指すことがあるが、当メディアおよび物流・ロジスティクス領域でCLOと言った場合は、Chief Logistics Officer:物流統括責任者を指す。

企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する役職である。

法改正に基づきCLOの設置が義務化

2024年4月26日、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(流通業務総合効率化法)と「貨物自動車運送事業法」の一部を改正する法律案が国会で可決・成立し、同年5月15日に公布された。

法改正に基づき、一定規模以上の事業者は「特定事業者」として認定され、主に下記の点が義務化されることとなった。

  • CLO(物流統括責任者)の選定義務化
  • 物流効率化を推進するための中長期計画の策定

対象となる荷主は3,000社程度となることが予想されており、法律である以上、対象となる企業については対策が求められる状況にある。

また、CLO同士の折衝や意思決定の機会なども増加することが見込まれるため、対象企業外においても、CLOもしくは同等の役職を設置する企業が増加していくことが見込まれる。

中長期計画において主に取り組むべき内容

CLOの設置と共に、中長期計画の策定も法改正に基づき求められる。事業者のうち一定規模以上のもの(特定事業者)に対し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、実施状況が不十分な場合は、国が勧告・命令を実施する方針が明記されている。

具体的には、主に取り組むべき措置として下記の三つが挙げられている。

  1. 荷待ち時間の短縮──適切な貨物の受取・引渡日時の指示、予約システムの導入 等
  2. 荷役時間の短縮──パレット等の利用、標準化、入出庫の効率化に資する資機材の配置、荷積み・荷卸し施設の改善 等
  3. 積載率の向上──余裕を持ったリードタイムの設定、運送先の集約 等
Figure 01 / CLO設置義務化に関する法改正
Figure 01 / CLO設置義務化に関する法改正出典:経済産業省

CLOの役割と主な職責

CLOは、単に物流担当者としてではなく、企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する役職である。

いわゆる「2024年問題」など、働き方改革関連法の改訂に伴い、自動車の運転業務の時間外労働の上限規制、少子高齢化に伴う人手不足などからも、物流領域の効率化やアップデートは社会課題として捉えられている。

部門間トレードオフ問題に対する全体最適での意思決定

日本企業では、「営業・販売」「物流部門」「製造部門」「調達部門」などが縦割りになっており、それぞれの部門の長が意思決定を行い、大企業となると「部署が違うと会社が違う」という状況の会社も多いのが現状である。

基本的には同じ会社であるため、同じ方向を見ていくこととなるが、内容によっては、部署間や組織間で利益がぶつかることがある。

例えば、顧客体験の最大化を目指せば、BtoB含め配送は早ければ早いほど良いということになるが、一方で物流コストは増大する傾向にある。物流領域でも、輸送コストを抑えようとしたら保管コストが増大するなど、部門間にまたがるトレードオフが発生するのが経営である。

では、どのような顧客体験を実装するのか──これは単に物流担当者だけで決められるものではない。だからこそ、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有するCLOという役職が必要となる。

物流の効率化を先導する

CLO設置の義務化と並行して、中長期計画などにおいても明記が求められる物流効率化を先導することが、CLOの重要な役割となる。

効率化しようとした際に、デジタル活用やDXは切っても切り離せず、そうした知見を有することはCLOの必須要件として認識されつつある。

16.9%
物流領域のデジタル化率(2021年)。業界全体としてアナログ運用が残り、CLOがDX推進を先導する余地は大きい。
出典:国土交通省『物流業務のデジタル化の手引き』

領域や規模感によっては完全にアナログとなっており、業界全体のデジタル化を推進する座組やコラボレーションを模索することも、CLOの重要な役割である。

Figure 02 / 物流デジタル化率
Figure 02 / 物流デジタル化率出典:国土交通省『物流業務のデジタル化の手引き』

脱炭素・サステナビリティーを推進する

物流効率化において、これまで効率化というと経済的なPL/BS視点での効率性が語られることがメインだった──どれくらいコストが下がったか、など。

一方で、今後の物流における効率化は、単に自社の経済性だけでなく、二酸化炭素排出などの「環境問題」、労働環境などの「人権問題」など、サステナビリティーとの両立が求められている。

そうした推進は、これまでの意思決定メカニズムと異なることもあり、役員相当となるCLOもその推進の一端を担うことが期待されている。

1.85億トン
運輸部門の二酸化炭素排出量(年間)。全体の19%程度を占めるため、脱炭素を国家的に進めるうえで物流業界としても対応が求められる。
出典:環境省『2021年度 温室効果ガス排出量(確報値)』
Figure 03 / 物流業界のCO₂排出量
Figure 03 / 物流業界のCO₂排出量出典:環境省『2021年度 温室効果ガス排出量(確報値)』

リスクマネジメントの高度化

CLOの役割がサプライチェーン全体にわたる際には、想定されるリスクは多様となる。何をリスクとして認定するか、そのリスクの影響度やインパクトをどう捉えるのか、対策としてリスクを受容するのか移転するのか──こうした対策が求められる。

他のCXOと共同しながら、サプライチェーンにまたがるリスクについて、CLOにおいても権限と責任を持って対応していくことが求められる。代表的なリスクの分類は以下の通り。

  • 自然災害・事故
  • 市場環境変化──金利変動・為替変動 など
  • 競合──競合の戦略変更、新規参入
  • 顧客──ニーズ変化、顧客層の変化
  • 風評被害──報道、各種団体からのクレーム 等
  • 商品・サービスリスク──リコール、知的財産権 など
  • 物流・運送リスク──誤配送、棄損、滅失、コスト増大
  • 調達──欠品、在庫滞留
  • 販売──納期遅れ、顧客満足度
  • 情報システム──情報漏洩、システム障害
  • 環境──CO₂排出、各種汚染
  • 労務──労基法違反、ハラスメント
  • コンプライアンス──契約不履行、金銭事故 等
  • ガバナンス──役員不正、グループ会社不祥事
  • 人材──モチベーション低下、人材流出

CLOの採用・育成方法

ここまで、CLOの概要や役割、また法改正に伴う設置の義務化について紹介してきた。ここからは、現在CLOがいない会社について、どのようにCLOをアサインしていけばよいかを紹介する。

Step 1 ─ CLOへの内部昇格者で適任者がいないか検討する

まず第一に検討すべきは、社内に適切な人材がいないかである。様々な領域を経験されてきた物流担当のトップがいるのであれば、CLOへの昇進を検討させるのも手である。

ただし、その場合であっても、CLOの役割明確化(職務規定策定)や、内製化を前提とするのであれば、CLOへのキャリアプランの作成も必要となる。CLOに就任させる人材は、どのような経験を積んでいくべきかを戦略的に検討しておく必要がある。

内部昇格の注意点としては、法改正で設置が義務化されたからといって、役員になるべき実績や評価を得られていない人材を、物流領域に多少詳しいというだけでCLOに就任させるケースである。

なぜ注意が必要かというと、そもそもCLOにふさわしいかという論点に加え、社内の公正な評価は企業マネジメントの基本であり、スライド式の役員就任は、モチベーション低下など負の影響が懸念されるためである。

Step 2 ─ 中途採用として外部からCLOの招聘を検討する

内部で適切な人材がいない場合、もしくはさらに適した人材を模索する場合は、外部から中途採用を探すこととなる。

CLO Careerでは、CLO人材に特化した人材紹介を提供しているため、関心ある方は是非問い合わせいただきたい。

また、経営者のリファーラルやネットワークを活用することも重要である。CLOは役員待遇となるため、今後の企業の経営において、経営陣との相性も非常に重要となる。

外から中途採用する場合においても、CLOに求める人材像やスキル、役割を明確にした上で募集していくことが求められる。

Step 3 ─ 新任CLOのサポートとして業務委託支援を検討する

内部昇進や外部からの中途であったとしても、CLOが、企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体についての役割を担うとなった場合、その活動についてはサポートが必要となることが想定される。

もちろん、内部人材のみで多様なテーマ(DX、SCM、サステナビリティー等)に対応していくことも考えられるが、業務委託などを初期は活用し、ある程度自走した段階で社員オンリーへ移行するという進め方もおすすめである。

まとめ

本稿の要点は以下の通りである。

  • 法改正に伴い、一定規模以上の事業者は、CLO(物流統括責任者)の選定が義務化された。
  • CLOの役割は、単に物流だけでなく、企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する役職である。
  • 適切なCLO人材は引手数多になる可能性が高く、特に対象企業においては、早期の対策が求められている。
  • CLO Careerでは、CLOにフォーカスし、採用・育成・サポートを総合的に支援している。対応を検討されている企業はご連絡いただきたい。
  • また並行して、CLOへの挑戦を検討している個人からのエントリーも随時受け付けている。

References

  1. 経済産業省「流通業務総合効率化法等の改正について」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/setsumeikaishiryo.html
  2. 国土交通省『物流業務のデジタル化の手引き』 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001608991.pdf
  3. 環境省『2021年度(令和3年度)温室効果ガス排出量(確報値)について』 https://www.env.go.jp/content/000150033.pdf
  4. 総務省『我が国におけるデジタル化の取組状況(2021年)』