CLO(物流統括管理者)に就任したからといって、物流統括に関わるすべての業務を自社で、ましてや自分ひとりで抱え込む必要はない。むしろ抱え込もうとした瞬間に、CLOは機能を止める。本稿が扱うのは、CLOという経営職の「職務遂行」をどう構成するかという問いである。最終責任は社内に残し、職務に必要な能力は内製と外部の組み合わせで設計する——その線引きの考え方を整理する。なお、倉庫や輸送という物流「機能」を3PLに委ねるかどうかは物流のmake-or-buy(内製か外注か)に、CLOという「役職そのもの」を外部で充たす話は社外CLO・業務委託という選択肢に整理した。本稿はそのどちらとも層が異なり、社内のCLOに就いた本人が、自分の「仕事」をどう内外に配分するかを主題とする。

先に、本稿の要点を示す。

  • CLOは全部を自社・ひとりで抱える役職ではない──国交省提言も、CLOが自身の責任・役割に関するすべての業務を単独で推進するのは難しいとし、補完チームの構築を「不可欠」とする。
  • 外注できないのは「最終責任(accountability)」──選任義務、全社的な意思決定、KPI・中長期計画の最終決定、委託先を統治する責任——これらは経営幹部であるCLOから切り離せない。
  • 調達できるのは「能力(capability)」──DX実装、データ基盤、M&A・PMIのデューデリジェンス、共同物流の設計、規制対応の専門助言、人材育成、戦略アドバイザリー。これらは内製・共同・外部のポートフォリオで構成してよい。
  • 「共有する」という第3の道がある──委託でも内製でもなく、同業・異業種と積載や配送網を共有する共同物流は、単独では届かない領域を埋める選択肢になる。
  • 外部活用は逃げではなく、提言が公認する正攻法──提言は外部人材登用型のキャリアパスや外部プログラムの活用を明示的に支持している。
  • 最大の落とし穴は「統治の放棄」──外に出しても、説明責任と統治の手綱は手元に残る。範囲・KPI・撤退条件を曖昧にしたまま手放すと、社内の空洞化とベンダーへの過度な依存を招く。

CLOは全部を自社で抱えなければならないのか?

答えは「否」である。物流統括管理者という肩書きは、ともすると「物流のすべてを背負う人」という像を呼び起こす。だが提言が描くのは、すべてを内製で抱える孤高の専門家ではなく、責任の所在を明確にしたまま、必要な力を社内外から束ねる統括者である。

ここで層を取り違えないことが肝心だ。物流という「機能」——倉庫運営や幹線輸送——を自社で持つか3PLに委ねるかは、古くからのmake-or-buyの論点であり、物流のmake-or-buyで論じた。本稿が問うのはそれとは別で、CLOという「人の職務」をどう配分するかである。法令対応の意思決定はCLOが握り、その実装はベンダーに出し、相手探しは同業との共有で進める——同じCLOの仕事の中でも、機能ごとに最適な担い手は違う。結論を先に言えば、握るもの・共有するもの・委ねるものの三つに仕分けることが、その出発点になる。

外注できない「最終責任(accountability)」とは何か?

外部活用を語る前に、外に出せないものを定義しておかなければならない。鍵は、説明責任(accountability)と実行責任(responsibility)を分けて考えることである。実行責任は委ねられる。だが説明責任は、委ねた先がどれだけ優秀でも、CLO本人と経営に残る。

法令がこれを裏づける。改正物流効率化法は、特定荷主(年度取扱貨物9万トン以上)に対し、CLOを「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」から選任することを求め、実務上は取締役・執行役員クラスの経営幹部を充てる前提で運用される(物流効率化法 第47条)。選任を怠れば100万円以下の罰金、届出を怠れば20万円以下の過料が科され得る(出典:国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)。この選任という行為そのものが、外注できない。

そこから導かれる「CLOが社内に残すもの」は、おおむね次の四つに整理できる。

  • 選任という事実──経営幹部としての選任は委譲も外注もできない、法令上の起点。
  • 全社最適の意思決定──部門間トレードオフの最終裁定。外部は助言できても決定はできない。
  • KPI・中長期計画の最終決定──何を目標に掲げ、どう所管大臣へ報告するか。
  • 委託先を統治する責任──外に出した先のSLA・コスト・改善を握り続ける手綱。

逆に言えば、この四つさえ手元に確保していれば、それ以外の「能力」は安心して外に出していける。

なぜCLOは全部を内製で抱えられないのか

外部活用は、好みの問題ではなく構造の問題である。提言自身が、CLOが自身の責任・役割に関するすべての業務を単独で推進することは難しいとし、CLOを補完して共に業務を進めるチームの構築を「不可欠」と明言している。国の文書が、内製単独の非現実性を認めているのだ。

背景には、物流が直面する構造的なギャップがある。ドライバーの時間外規制で輸送供給が細るなか、対策を講じなければ輸送能力は大きく不足すると試算されてきた。

34%
対策を講じなかった場合、2030年には輸送能力が約34%不足する可能性があると指摘されてきた。単独企業の内製努力だけで埋めきれる幅ではなく、外部や同業との連携が前提になる。
国土交通省試算

ここで断っておきたいのは、外部活用が常に正解ではないという点である。物流を競争優位の源泉とみなす企業は、あえて内製に投資し、ノウハウとデータを自社に囲い込む。要は、すべてを外に出すのでも、すべてを内に抱えるのでもなく、機能ごとに見極めるということだ。その見極めの軸を、次節から具体化していく。

国はCLOの外部活用をどう位置づけているか

外部活用は、提言が公認する正攻法である。第一に、提言はCLO自身がすべてを備えている必要はなく、組織体制の中で人材の協力を得て補完するのが適切だとする(提言 p.12)。第二に、人材確保のキャリアパスとして外部人材登用型を正式に位置づけ、他の荷主でCLOを務めた経験者や物流事業者出身者を即戦力として迎える形を認める(提言 p.16)。第三に、CLO個人の能力開発でも、外部の知識・知見を取り込む観点から外部講師や外部プログラムを活用すべきだとする。

社外との連携相手についても、提言は取引先、同業他社、3PL・物流事業者、異業種という広がりで整理する(提言 p.15)。とりわけ3PLとの連携には、ひとつ重要な但し書きが付く。

単なる物流業務のアウトソーシングに留まらず、荷主の立場に立ったコンサルティングや情報提供・提案・助言を得ることが必要である。(国交省提言の趣旨)

つまり国は、外部に「出すこと」を勧めながら、同時に「出し方」に質を求めている。受け身で業務を渡すのではなく、荷主の立場から助言を引き出す使い方をせよ、ということだ。この発想が、次節以降の配分設計と統治設計の土台になる。

CLOの職務は何を握り、何を共有し、何を委ねるか

CLOの職務を機能に分解し、内製・共同・外部のどれを軸に据えるかを目安として並べると、配分の全体像が見えてくる。下表は固定の正解ではなく、自社の戦略と人材状況に応じて動かす出発点である。

CLO職務のケイパビリティ配分 — 内製/共同/外部の目安
CLOの職務機能担い手の目安配分を決める判断軸
全社最適の意思決定・KPI設計内製(CLO本人)説明責任が経営に帰属し、委譲できない
規制対応・届出の実務内製+外部の専門助言法的責任は社内、複雑な解釈は外部に確認
データ基盤の構築/日常の可視化外部(構築)+内製(運用)構築は希少技術、運用はナレッジを社内に残す
物流DX・需要予測AI・配車最適化外部(実装)+内製(定着)実装は専門外部、定着は自走できる組織へ
M&A・PMI・デューデリジェンス外部(都度)頻度が低く専門性が希少、常設は非効率
共同物流の設計・相手探し共有(同業・異業種)単独では成立せず、相手との協働が前提
人材育成内製+外部プログラム基礎は社内OJT、高度な体系知は外部講座
戦略アドバイザリー外部(随時)客観性と外部知を借り、意思決定は社内
編集部作成(国土交通省提言の役割・社外連携の整理に基づく)

配分を決める軸は、突き詰めれば四つに収れんする。専門性の希少度(社内で再現できるか)、発生頻度(常設に値するか)、機密性(外に出してよい情報か)、そしてナレッジ残存要件(社内に知見を残す必要があるか)である。この四軸で各機能を採点すれば、握る・共有する・委ねるの仕分けはおのずと定まってくる。

外部に出してよい能力の見取り図——誰に何を頼むか

「外に出す」と一口に言っても、相手の形態は一様ではない。何をどの形態に頼むのが自然かを、留意点とあわせて並べておく。

外部活用の形態と使いどころ
形態主に頼めること留意点
3PL倉庫・輸送オペレーションの受託委託範囲とSLAを明文化。詳細は3PL選定と委託先ガバナンスへ
4PL物流戦略の企画+複数3PLの統括戦略まで委託先が握るため、利益相反・ベンダーロックイン・運用のブラックボックス化が構造上起こりうる
共同物流同業・異業種との積載・配送網の共有集配時間の調整、情報管理、誤出荷時の影響範囲。共同物流へ
顧問・インテリム専門知見の随時補完/過渡期の実務代行役職要件を満たすかは契約設計次第。社外CLO・業務委託へ
コンサル・アドバイザリー戦略設計・DD・変革の伴走支援実行と定着まで伴走するか、提言段階で終わるかを見極める
システム/SaaSベンダーWMS・TMS等の実装外注依存から自走へ。ナレッジの内製化を契約に織り込む
編集部作成

最上位の統合形態である4PLは、戦略の企画から現場の統括までをまとめて委ねられる魅力がある一方、戦略まで委託先が握ることの代償も大きい。委託先と荷主の利害が必ずしも一致しないこと、特定ベンダーから抜け出しにくくなること、改善の論理が社内に蓄積されず見えなくなること——これらは多くの導入解説では語られないが、構造上は起こり得るリスクとして見積もっておくべきだ。便利さと引き換えに統治を手放さない設計が要る。

頻度が低く専門性の高い領域——たとえばM&Aに伴う物流のデューデリジェンスや統合(PMI)——は、社内に常設するより都度、外部の知見を借りるのが現実的である(実務は物流M&AのPMIに整理した。外部DDの一例としては、AI×専門家による戦略的デューデリジェンスを手がけるDD-AX〈https://dd-ax.com/〉などがある)。あくまで選択肢の一つとして、内製・コンサル委託と並べて検討すればよい。

最大の落とし穴——「統治の放棄」をどう避けるか

外部活用が失敗するとき、原因はたいてい能力の調達そのものではなく、統治の放棄にある。委託の範囲が曖昧で、KPIもモニタリングの仕組みもなく、改善の議論が委託先まかせになる——こうなると、能力を借りたはずが主導権を渡してしまう。前節で確認したとおり、実行責任は委ねられても説明責任は残る。だから外部活用の巧拙は、出すか出さないかではなく、出した後をどう握り続けるかで決まる。

握り続けるための要点は三つに集約できる。

  1. 範囲とKPIを明文化する──何をどこまで委ね、何をもって成果とするか。曖昧さは後の主導権争いの種になる。
  2. ナレッジの残存を設計に組み込む──成果物だけでなく、判断の根拠や運用知が社内に残る形で受け取る。外注依存から自走への移行を最初から織り込む。
  3. 撤退可能性を確保する──特定ベンダーに固定されない契約・データ所有・代替先の確保。出口があるからこそ、対等な統治が成り立つ。

委託先のガバナンスを具体的な実務として詰める段では、SLA設計やデータ所有、出口条項の作り込みが論点になる。3PLを軸にしたより詳細な統治の作法は3PL選定と委託先ガバナンスに譲るが、本稿で強調したいのは、それらの個別実務を貫く一般原則——統治の手綱は、誰に何を出しても手放さない——という一点である。

外部と協働して能力を広げた実例はあるか

抽象論だけでは地に足がつかない。経済産業省『CLO取組事例集』は9社の取り組みを収め、巻末に新任CLOへのメッセージや実践ポイントを添える。そこには、CLOが主導してメーカーと卸の間で企業間データ連携を構築するなど、社内に閉じず外部と協働して能力を広げた例が並ぶ(各社の詳細は経産省CLO取組事例集の読み解きに整理した)。

「共有する」という第3の道の代表例が、共同物流である。食品大手が出資するF-LINEは、競合に近い企業同士でも「競争は商品で、物流は共同で」と共同化できることを示し、北海道の拠点集約ではCO2を約16%削減する見込みを示した(出典:食品メーカー6社・F-LINE共同プレスリリース、2023年7月)。単独では届かない積載効率や配送網の課題を、相手と分かち合うことで超える——これも立派な外部活用である。

CLO個人の能力もまた、外部で補える。社内のOJTに加え、JILSのロジスティクス経営士や大学のSCMリカレント教育といった外部プログラムを使う企業は珍しくない。提言が外部講師・外部プログラムの活用を勧めるのは、こうした実践を踏まえてのことである。

「選任した≠機能する」を外部活用でどう埋めるか

CLOの選任という入口の届出は進みつつある(Hacobu『CLO選任に関する調査』2026年2月、n=101 ほか)。だが、選任が進むことと、CLOが機能することは別の問題だ。義務化を満たした「選任済み」の段階から、経営アジェンダとして機能するCLO体制へ——その距離を埋める作業こそが、本稿で論じてきた能力の配分設計にほかならない。

外部知見を借りる相手は、文脈ごとに選べばよい。物流DXや需要予測AI、配車最適化のような実装フェーズで、PoC止まりを避けて成果につなげたいなら、AI導入の実行・定着支援を専門とするAX Boost〈https://axboost.jp/〉のような外部支援が一例になる。CLOの招聘、社外CLOの起用、既任CLO体制の立て直しといった人事・体制の領域であれば、エグゼクティブ・サーチの企業向け支援が一例だ。いずれも唯一の正解ではなく、自社で育てる道、3PLや同業との連携で補う道と並べて、選択肢の一つとして検討すればよい。

最後に、就任したばかりの本人へ。何を握り何を手放すかという本稿の設計は、孤立せずに役割を立ち上げるための土台でもある。就任直後の頭の整理は、姉妹記事新任CLOのための役割オリエンテーションに詳しい。全部を自社で、ひとりで抱えないこと——それは妥協ではなく、機能するCLOであるための、最初の設計判断である。

よくある質問(FAQ)

CLOは物流の全業務を自社で完結させる必要がありますか?
いいえ。国交省提言も、CLOがすべての業務を単独で推進することは難しいとし、補完チームの構築を不可欠としています。最終責任(選任義務・全社的意思決定・KPI設計・委託先の統治)は社内に残し、DX実装やデータ基盤などの能力は内製と外部のポートフォリオで設計するのが現実的です。
CLOの仕事のうち、外部に出してはいけないものは何ですか?
最終責任(accountability)です。具体的にはCLOの選任そのもの、KPI・中長期計画の最終決定、全社的なトレードオフの意思決定、そして委託先を統治する責任。これらは法令上CLOが経営幹部であることを前提とするため委譲できません。一方、実装や専門助言といった実行責任(responsibility)は外に出せます。
外部委託(アウトソーシング)と「丸投げ」は何が違いますか?
委託範囲・KPI・撤退条件を明文化し、CLOが統治の手綱を握り続けるのがアウトソーシング、それらを曖昧にして統治ごと手放すのが丸投げです。提言も、3PLとの連携を単なるアウトソーシングに留めず、荷主の立場で助言を得るべきだとしています。丸投げは社内の空洞化やベンダーへの過度な依存を招きます。
4PLにすべて任せれば楽になりますか?
便利さには代償があります。4PLは戦略の企画まで委託先が握るため、利害の不一致、特定ベンダーへの固定、運用のブラックボックス化が構造上起こり得ます。撤退可能性とナレッジの残存を契約と運用に組み込み、統治の責任を社内に残す設計が欠かせません。
共同物流は外部活用に含まれますか?
含まれます。共同物流は委託でも内製でもない「共有する」第3の道で、同業・異業種と積載や配送網を分かち合います。単独では埋めきれない輸送力のギャップに対し、提言もCLOに同業他社や異業種との連携を求めています。F-LINEのように、競合に近い企業同士でも物流は共同化できます。

References

  1. 国土交通省『物流統括管理者(CLO)に期待される姿』令和8年3月(物流統括管理者(CLO)のあるべき姿に関するワークショップ提言) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001992615.pdf
  2. 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(CLOの選任・罰則) https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
  3. 経済産業省『CLO取組事例集-物流改革の実践と成果』 https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/CLO_collection_of_cases.pdf
  4. 国土交通省 物流政策(2030年の輸送力不足に関する試算)
  5. 食品メーカー6社・F-LINE 共同プレスリリース(2023年7月、北海道拠点集約によるCO2削減見込み)
  6. Hacobu『CLO選任に関する調査』(2026年2月、n=101)
  7. DD-AX(AI×専門家による戦略的デューデリジェンス) https://dd-ax.com/
  8. AX Boost(AI導入の実行・定着支援) https://axboost.jp/