CLO(物流統括責任者)は、法定対応で形だけ設置するレベルから、業界・社会変革のリーダーまで、明確な段階がある。本稿では、CLO 設置と同時に義務化される取り組み事項、そして CLO Career が定義する 4 つのレベル感を整理し、採用担当者・候補者の双方が「どのレベルを目指すか」を明確化する助けとする。

CLOとは?

CLOは、Chief Logistics Officerの頭文字をとった役職で、日本語では物流統括責任者、もしくは物流担当役員などを指す。

本サイトでは、企業価値の持続的な向上に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体に責任と権限を持つ役職、と定義している。

※ 法改正に基づくCLO設置義務化やCLOの概要については、別記事「CLO(物流統括責任者)とは何か?」 (/topics/clo) も参照されたい。

CLOの役割と職責

CLOは「企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する役職」と紹介したが、すでにCLOを設置している企業についても、その役割は多様である。

CEOや人事役員の職責が会社の規模で変わるのと同じで、CLOの守備範囲も企業によって大きく振れる。だからこそ『自社のCLOに何を任せるか』を最初に言語化しておかないと、採用も評価も空回りする。

実際、同じ『CLO』でも、物流部の延長線上で捉える企業もあれば、調達から販売までの全体最適まで担わせる企業もある。

CLOの設置義務化と同時に義務化された取り組むべき内容

CLOの役割やレベル感については後述するが、CLO設置の義務化とともに、荷主として取り組むべき事項として挙げられているのが、主に下記である。

  1. 荷待ち時間の短縮──適切な貨物の受取・引渡日時の指示、予約システムの導入 等
  2. 荷役時間の短縮──パレット等の利用、標準化、入出庫の効率化に資する資機材の配置、荷積み・荷卸し施設の改善 等
  3. 積載率の向上──余裕を持ったリードタイムの設定、運送先の集約 等
  4. 中長期計画──(後述)

上記の取り組むべき措置などは、CLOが最低限リーダーシップをもって取り組むべき事項である。

ただし、上記の取り組みを行うことで「企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限」を果たせているかというと、明確にNoと言えるだろう。

中長期計画で定める事項

CLOに求められるレベル感からは少し脱線するが、取り組むべき事項として挙げられている「中長期計画」については、その明確なフォーマットはまだ定められていないが、省エネ法における(中長期計画)を参考にして作成されると言われている。

省エネ法では、エネルギー使用量が原油換算で年1,500kl以上の事業者(特定事業者)が、使用量を削減する「中長期計画」を国に提出する義務を負う。物流の中長期計画も、このフォーマットを参考に作られると見られている。

Figure 01 / 省エネ法における中長期計画フォーマット
Figure 01 / 省エネ法における中長期計画フォーマット出典:経済産業省 資源エネルギー庁

省エネ法の中長期計画では、エネルギー使用量(原油換算kl)や合理化に関する計画内容と期待効果、原単位削減の期待効果、非化石エネルギーへの転換目標といった事項が求められる(全項目は Figure 01 を参照)。

こうした省エネ法の枠組みに倣う形で、物流の中長期計画でも、前掲の荷待ち時間・荷役時間・積載率の改善目標と、その年次の進捗を報告する構成になると見られる。新しい項目が増えるというより、同じ三本柱を計画値と実績で管理していくイメージに近い。

CLOに求められるレベル感

CLOの役割が会社により若干の違いがあったとしても、CLOにはいくつかのステップ(レベル)があり、より高次のものを目指していくことが求められている。

また、採用担当者としても、どのレベルのCLOを迎え入れたいかを明確にする必要がある。

CLOの各ステージ

CLO Careerでは、CLOのステージを四つに分けて分解している。

  1. レベル0(個社未満)— なんちゃってCLO──法定対応のために担当部長をCLOに据えるか、畑違いの役員が形だけ兼任する段階。典型は、総務や経営企画の部長が他業務と掛け持ちでCLOを名乗り、取締役会に物流議題が年に一度上がるかどうか、という状態だ。役員待遇への不公平感など、むしろ社内に弊害を生むことすらある。
  2. レベル1(個社)— CLO見習い──企業価値向上に向け、全社の業務改善&改革を推進。会社ごとに設定されたCLOの領域毎に、一定の成果を創出するCLO。
  3. レベル2(ステークホルダー)— 会社・ステークホルダー変革CLO──ビジネスモデルの変革や自社だけでなく、取引先等ステークホルダーの変革を推進。必要に応じてビジネスモデルそのものの変革のリーダーとなるCLO。
  4. レベル3(業界・社会)— 業界・社会変革のリーダーCLO──業界の課題や問題に対しても一定のインパクトを創出。自社だけでなく、業界を牽引するリーダーの役割を担う。
Figure 02 / CLOのレベル感(レベル0〜3)
Figure 02 / CLOのレベル感(レベル0〜3)出典:CLO Career 編集部

CLOは「企業価値向上の持続的発展に向けて、全社のサプライチェーン・ロジスティクス全体の責任と権限を有する役職」となる。CLOがいればいいということではなく、企業(やもっと目線を高くすると社会)に対して何かしらの+のインパクトを残すことが求められる。

他のCXOと違うのは、CLOの成果が荷待ち時間や積載率といった、外部に開かれた物理指標で測られる点だ。

CLOのキャリアアップの壁

このレベルを上がっていく道には、順に越えるべき壁がある。第一の壁は、対象企業の業務とオペレーション、そしてロジスティクス・サプライチェーンの理解だ。どれだけ権限と責任を与えられても、ここがなければ価値提供は始まらない――いわばスタートラインである。第二の壁は、デジタルとサステナビリティ(ESG)の知見。業務改善はデジタル抜きにはほぼ不可能で、上場企業なら取引先確保や人材の観点からもサステナビリティは前提になりつつある。第三の壁は、企業価値向上に向けた具体的な変革の実績だ。全社横断の変革は必ず既存部門の抵抗を生む。在庫を抱えたい営業、コストを締めたい購買を相手に意思決定を通した経験――たとえば営業の反対を押し切って納品リードタイムを2日延ばし、その代わり積載率を引き上げた、といった修羅場の数が、ここで効いてくる。そして最後の壁が、自社を超えて社会や業界全体にインパクトを生み出した実績である。これらの壁は、そのままレベル0から3へと上がる階段に対応している。

業界リーダー型のCLOをどう見極め、どう育てるか——ここは本サービスが最も力を入れている領域である。

まとめ

最後に要点を振り返る。改正物流効率化法により、年度取扱貨物9万トン以上の特定荷主はCLO(物流統括管理者)の選任を義務づけられ、あわせて省エネ法の中長期計画に倣った計画の策定が求められていく。だがCLOは「置けばよい」役職ではない。法定対応のための『なんちゃってCLO』から、全社を変える見習い、ステークホルダーを動かす変革者、そして業界・社会にインパクトを残すリーダーまで、その水準は連続した段階をなす。採用する側はどの段のCLOを迎えたいかを先に定める必要があり、目指す個人はまず自社の業務・オペレーションとロジスティクスの理解という土台を固めなければならない。最終的に、自社を超えて業界全体を動かすリーダーを輩出すること――それがCLO Careerの目標である。

References

  1. 経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法 中長期計画書」
  2. 国土交通省「改正物流効率化法 関連資料」
  3. CLO Career 編集部「CLOレベル感の整理」