改正物流効率化法は荷主に「物流の効率化」を求めるが、条文はやや抽象的だ。だが分解すれば、求められているのは積載効率を高め、トラックの稼働を無駄なく使うための具体的な施策の束にほかならない。本稿は、荷待ち・荷役の削減から、積載効率の向上、パレット標準化、モーダルシフト、共同輸配送、そしてフィジカルインターネットという長期構想までを、荷主CLOが中長期計画書に織り込む「効率化メニュー」として一枚の地図に整理する。各施策には、効果だけでなく前提条件と落とし穴がある。

改正法の「判断基準」は施策メニューである

改正物流効率化法は、特定荷主に物流の効率化に資する措置を求め、その判断基準(法第43条に基づく荷主の判断基準)として大きく三つの方向——荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮、そして積載効率の向上——を示している。これらは抽象的な努力目標ではなく、中長期計画書に数値目標として書き込み、毎年の報告で進捗を問われる具体的な約束である。

言い換えれば、CLOの仕事は「どの施策を、どの順で、どの目標値で実装するか」を選ぶことだ。施策は相互に関連し、単独では効果が頭打ちになる。以下、着手のしやすい順に七つのレバーを見ていく。

荷待ち・荷役時間の削減——最初の一手

最も着手しやすく、効果が直接的なのが荷待ち・荷役時間の削減である。国土交通省の調査では、荷待ちのある運行の平均荷待ち時間は1時間34分、荷役時間(平均1時間29分)を加えれば合計3時間3分に達する。改正法は1運行あたり2時間以内(1回の受渡しごとに1時間以内)を目安に置いた。

基本ツールはトラック予約受付システム(バース予約)である。到着時刻を分散させ、構内の混雑と待機を平準化する。これに入出庫プロセスの見直し、検品の簡素化、パレット荷役への切り替えを組み合わせる。荷待ちは、荷主が自社の構内で完結して改善できる数少ない領域である点が重要だ。構造的な背景はドライバー不足の打ち手(/topics/driver-shortage)でも扱っている。

積載効率の向上——空気を運ばない

営業用トラックの積載率は2024年度で41.38%(前年度比+1.35ポイント)——政府が2028年度までに掲げる44%にはなお届かない(出典:国土交通省『自動車輸送統計年報』2024年度。44%は改正物流効率化法に基づく令和10年度目標)。半分以上の容積を空気が占めたまま走っている計算で、ここを埋めれば同じ台数でより多くを運べる。

積載率を上げる手段は複数ある。発注・出荷の平準化で繁閑差をならし、ロットをまとめる。帰り荷(復路の貨物)を確保して空車回送を減らす。外装サイズを見直してパレットやコンテナの容積を使い切る。いずれも一社で着手できるが、最大の効果は取引先や同業との連携——後述する共同輸配送——で生まれる。

パレット標準化——T11型という共通言語

手積み・手卸しは荷役時間を押し上げる最大の要因だ。これを断つのがパレット化と一貫パレチゼーション(出荷から納品までパレットを載せ替えない方式)である。2024年6月、官民物流標準化懇談会のパレット標準化推進分科会が最終とりまとめを公表し、11型(1,100×1,100mm)パレットを標準として推進する方針を定めた。標準化により、荷役作業時間を1人あたり年間375時間から315時間へ、約16%削減できると見込む。

ただしパレット標準化には固有の難所がある。第一に、規格が違えば載せ替えが発生し効果が消える——だからこそ業界共通の規格が要る。第二に、パレットの回収・管理コストとレンタルプールの整備。第三に、初期投資が中小の取引先に重く、自社だけ標準化しても川下・川上がそろわなければ意味が薄い。標準化は「自社で完結しない施策」の典型である。

モーダルシフト——鉄道・内航へ

モーダルシフトは、トラック輸送の一部を鉄道や内航海運へ移す施策である。長距離・大ロット・定型の輸送で効果が大きい。国土交通省の試算では、輸送量あたりのCO2排出原単位は鉄道が営業用トラックの約10分の1、内航船でも約5分の1とされ、環境対応とドライバー依存の低減を同時に達成できる。

約1/10
輸送量あたりのCO2排出原単位は、鉄道が営業用トラックのおよそ10分の1(19g 対 195g-CO2/トンキロ)。長距離・大ロットの定型輸送ほど、モーダルシフトの削減効果は大きい。
国土交通省

実例も蓄積されている。トピー工業は鉄道への切り替えで対象輸送のCO2を約65%削減したと公表している。内航海運の活用でも同様に大きな削減が報告されており、国も「モーダルシフト等推進事業」で転換を後押しする。

一方で限界も明確だ。鉄道・内航はリードタイムが長く、ダイヤや航路に制約される。鮮度や短納期が求められる貨物、ターミナルから遠い拠点には向かない。モーダルシフトは「すべてを移す」のではなく、「移せる輸送を見極めて移す」施策である。

共同輸配送——競合と運ぶ

積載率とモーダルシフトの効果を一段引き上げるのが、荷主同士で輸送を共有する共同輸配送である。食品大手が出資するF-LINEは、競合に近い企業同士でも「競争は商品で、物流は共同で」共同化できることを示した。北海道の拠点集約ではCO2を約16%削減する見込みを示し(出典:食品メーカー6社・F-LINE 共同プレスリリース、2023年7月)、異業種間でも戻り便の活用で年間数百台規模の削減事例がある。

共同輸配送の本質的な障壁は、物流ではなくガバナンスにある。需要予測や出荷量といったSCM情報の共有は、競合への情報流出と隣り合わせだ。何を、どの粒度で、どの仕組みを介して共有するか——これを法務・経営企画と設計せずに参加すると、効率化の見返りに競争情報を失う。共同物流の類型・契約・KPI設計は「共同物流の実装」(/topics/joint-logistics)で詳述する。

フィジカルインターネット——2040年の地平

個別施策の先にある長期構想が、フィジカルインターネットである。インターネットがデータをパケットに分けて共有網で運ぶように、物流を標準化されたコンテナと共有インフラで運ぶという発想だ。経済産業省と国土交通省は実現会議でロードマップを描き、2040年の実現を目標に据えている。

遠い構想に見えるが、ここまでに挙げた施策——パレットや外装の標準化、データ連携、共同輸配送——は、いずれもフィジカルインターネットへの布石でもある。CLOにとっての含意は明快だ。目先の中長期計画で進める標準化と共同化を、長期の業界インフラへの投資として位置づけられるかどうかが、施策の一貫性を決める。

中長期計画書への落とし込み

最後に、これらをどう中長期計画書へ落とすか。鍵は、施策を羅列するのではなく、自社の物流特性(距離・ロット・温度帯・繁閑)に照らして優先順位をつけ、それぞれに測定可能な目標値と期限を与えることである。荷待ち2時間以内、積載率の目標値、モーダルシフト率——測れない目標は、毎年の報告で形骸化する。

そして施策の多くは「自社で完結しない」。パレットも共同配送もデータ連携も、取引先・同業・行政を巻き込んで初めて効果が出る。だからこそ、社内の調整権限と社外への交渉力を併せ持つCLOの存在が要になる。計画の様式と判定の実務は「特定荷主の判定と中長期計画書の実務」(/topics/clo-compliance)を参照されたい。

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References

  1. 国土交通省『改正物流効率化法 理解促進ポータル(荷主の判断基準等)』 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/sippers/judgment-criteria/
  2. 国土交通省『トラック輸送状況の実態調査結果』(荷待ち1時間34分・荷役1時間29分)
  3. 国土交通省『自動車輸送統計年報』(2024年度 積載効率41.3%)
  4. 官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会『最終とりまとめ』(2024年6月) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001751646.pdf
  5. 経済産業省・国土交通省『フィジカルインターネット・ロードマップ』(2022年3月) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/physical_internet/pdf/20220308_1.pdf
  6. 国土交通省・経済産業省・農林水産省『物流の適正化・生産性向上に向けたガイドライン』(2023年6月)
  7. 国土交通省『モーダルシフトの推進』(CO2排出原単位・モーダルシフト等推進事業) https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html
  8. 国土交通省『改正物流効率化法 理解促進ポータル(CLO選任)』 https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo/
  9. 関連姉妹記事「特定荷主の判定と中長期計画書の実務」(/topics/clo-compliance)
  10. 関連姉妹記事「共同物流の実装」(/topics/joint-logistics)
  11. 関連姉妹記事「物流ドライバー不足の構造と荷主の打ち手」(/topics/driver-shortage)
  12. 関連姉妹記事「物流業界とサステナビリティ」(/topics/sustain)
  13. 関連姉妹記事「改正物流効率化法とCLO選任義務 完全ガイド」(/topics/cloact)