物流コストは、企業の損益計算書に一行では現れない。輸送費、保管費、荷役費、包装費、物流管理費――機能ごとに発生し、外部委託費と自家物流費に分かれ、調達・社内・販売の各局面で積み上がる構造コストである。だからこそ、まず内訳を構造で把握しなければ、どこに手を打つべきかも、自社の水準が高いのか低いのかも判断できない。本稿は、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の『2024年度物流コスト調査』を一次資料として、機能別の構成比、売上高物流コスト比率5.44%という水準の読み方、業種別の差、そしてベンチマークの方法までを、出典付きで整理する。コスト構造を可視化することは、物流統括責任者(CLO)が最初に着手すべき仕事でもある。

物流コストとは何か——機能別の内訳で捉える

物流コストとは、原材料の調達から製品が顧客に届くまでの一連の物流活動に要する費用の総称である。経済産業省(旧通商産業省)が定めた『物流コスト算定・実態調査マニュアル』の考え方に基づき、JILSの物流コスト調査でも、物流コストは「機能別」「支払形態別」「領域別」という三つの軸で分解される。経営として最初に押さえるべきは機能別の内訳である。

機能別では、物流コストは次の五つに区分される。この分類は費目の意味が明確で、削減施策と一対一で結びつけやすい。

  • 輸送費──工場・倉庫・店舗・顧客の間でモノを運ぶ費用。調達輸送費・社内輸送費・販売輸送費に分かれ、トラック運賃・燃料費・車両費などが含まれる。
  • 保管費──倉庫・物流センターでモノを在庫として保持する費用。資材保管費と製品保管費があり、施設費・在庫費用・減価償却費などを含む。
  • 荷役費──入出庫・積み降ろし・仕分け・ピッキングなど、モノを動かす作業の費用。人件費の比重が高い。
  • 包装費──商品保護や荷扱いのための梱包・緩衝材・パレット等の費用。
  • 物流管理費──受発注処理・在庫管理・物流システム運用・物流部門の管理人件費など、物流をマネジメントするための費用。

さらに支払形態別では、物流専業者や物流子会社に支払う「支払物流費」と、社内で自家物流を行う「自家物流費」に分かれる。JILS『2024年度物流コスト調査』では全業種平均で支払物流費が物流コストの82.75%を占め、自家物流費は17.25%であった。多くの企業で物流コストの大半が外部への支払いであるという事実は、運賃水準の変動が自社の損益に直接効くことを意味する。

JILS調査が示す機能別構成比——輸送費が過半という構造

物流コストの内訳を理解する出発点は、輸送費が突出して大きいという構造である。JILS『2024年度物流コスト調査報告書(概要版)』によれば、全業種(有効回答191社)の物流コストを機能別に見ると、輸送費が55.89%、保管費が19.66%、その他(包装費・荷役費・物流管理費の合計)が24.45%であった。物流コストのおよそ過半は「運ぶ」ことに費やされている。

55.89%
物流コストに占める輸送費の割合(全業種平均)。保管費19.66%、その他24.45%を大きく上回り、物流コストの過半が「運ぶ」費用に集中している。
JILS『2024年度物流コスト調査報告書(概要版)』(2025年4月)

その他24.45%の内訳は、荷役費15.52%、物流管理費4.93%、包装費4.00%である(いずれも全業種平均、JILS同調査)。注目すべきは荷役費で、これは入出庫・仕分け・ピッキングといった作業の人件費が中心であり、保管費に次ぐ規模を占める。「保管」と「荷役」を合わせると物流コストの約35%に達する。倉庫を起点とする作業領域は、輸送に次ぐ第二のコストセンターである。

この機能別構成比は、調査年度によって小幅に変動するものの、「輸送費が過半・保管費が約2割・残りが荷役を中心とするその他」という大枠は安定している。コストを構造で捉えるとは、まずこの三層の比率を自社で把握することにほかならない。輸送費を握れていない物流コスト管理は、最大費目を握れていないということである。

売上高物流コスト比率5.44%——過去20年で2番目の高さ

機能別の「内訳」と並んで、経営が注視すべきもう一つの指標が「売上高に対する物流コストの比率」である。JILS『2024年度物流コスト調査』によると、全業種平均の売上高物流コスト比率は5.44%となり、前年度(2023年度調査5.00%)から0.44ポイント上昇した。これは、調査の歴史において5.70%を記録した2021年度調査に次ぐ、過去20年で2番目に高い水準である。

5.44%
2024年度の全業種平均・売上高物流コスト比率。前年度から0.44ポイント上昇し、過去20年で2021年度(5.70%)に次ぐ2番目の高さとなった。
JILS『2024年度物流コスト調査報告書(概要版)』(2025年4月)

この比率は「売上100円あたり何円を物流に費やしているか」を示す。0.44ポイントの上昇は小さく見えるが、売上高の規模が大きい企業ほど絶対額のインパクトは大きい。なお速報値の段階では5.45%とされ、概要版で5.44%に確定している(JILS)。0.01ポイントの差は集計過程の確定によるもので、いずれもほぼ同水準と理解してよい。

重要なのは、この上昇が「価格転嫁の進展」という側面を含む点である。JILSは、2022年度から2023年度にかけて売上高物流コスト比率が2年連続で低下したのち、2024年度に再び上昇に転じた背景として、荷主企業から物流事業者への価格転嫁が一定程度進展したことを指摘している。コストの上昇は必ずしも非効率の表れではなく、適正運賃への是正という構造変化の反映でもある。

ただし、2年連続で回答した企業(140社)に限定して比較すると、売上高物流コスト比率は前年度から0.20ポイント下降の5.16%であった(JILS)。これは、回答企業の入れ替わりによる影響を取り除いた数値であり、全体平均(5.44%)とは方向が異なる。同じ調査の中でも「全体平均」と「同一企業の経年比較」では見える絵が違う。比率を読むときは、どの母集団の数値かを必ず確認する必要がある。

マクロでも物流コストは過去20年で最高水準にある

企業ミクロの比率だけでなく、日本経済全体(マクロ)で見ても物流コストは高止まりしている。JILS『2024年度物流コスト調査』に含まれるマクロ物流コスト調査によれば、日本のGDPに対するマクロ物流コスト比率は、最新値である2022年度に9.6%となり、過去20年間で最も高い水準に達した。マクロ物流コストの総額は54.2兆円である(いずれもJILS、公的統計の公表ラグにより2022年度が最新値)。

マクロ物流コスト比率は2019年度以降、毎年上昇が続いている。個社の比率上昇が一時的・個別的な事象ではなく、日本全体に共通する構造圧力であることを、この指標は裏づけている。自社の物流コスト比率が上がっているとき、それは「自社だけの問題」ではない可能性が高い。

業種別の比率差をどう読むか——製造・卸・小売

売上高物流コスト比率は業種によって構造的に異なる。同じ5.44%を全社一律のベンチマークにすると判断を誤る。JILS『2024年度物流コスト調査』の業種大分類別の数値は次の通りである。

  • 製造業 5.37%──前年度比0.21ポイント増。回答131社。輸送費の比率が他業種より高い傾向にある。
  • 卸売業 5.19%──前年度比1.06ポイント増。回答37社。多頻度小口配送の比重が比率を押し上げやすい。
  • 小売業 6.38%──前年度比1.06ポイント増。回答18社。店舗配送・多頻度納品の負荷が大きく、全業種で最も高い水準。
  • その他(非製造業)5.83%──前年度比0.41ポイント増。回答5社。

2024年度調査では、製造業・卸売業・小売業・その他のすべての業種で売上高物流コスト比率が上昇した(JILS)。一方で、業種ごとの母集団の回答企業数は年度により入れ替わりがあり、特に回答社数の少ない業種の単年値は振れやすい。業種別比率は「絶対値の精密な比較」ではなく「自社の業態がどの帯域にあるか」という大まかな位置づけに使うのが安全である。

また機能別構成比も業種で異なる。一般に、製造業は工場間・販売物流の輸送費比率が高く、小売業・卸売業は店舗配送や多頻度小口に伴う荷役・配送の比重が相対的に高い。自社の機能別内訳を業種特性と照らして読むことで、「どの費目が自社の業態にとって相対的に重いのか」が見えてくる。食品・飲料のように三温度帯やトラック依存度の高い業界では、固有の制約がさらにコスト構造を規定する(この点は /topics/clo-food で詳述している)。

自社の比率は高いか低いか——ベンチマークの方法

「自社の物流コスト比率は5.44%より高いから問題だ」――この読み方は短絡的である。前述の通り比率は業種で構造的に異なり、さらに自社の事業構造(取扱品目の重量・容積・単価、配送頻度、内製と外注の比率)によっても大きく変わる。ベンチマークは次の順序で行うべきである。

  1. ① まず機能別に分解する──自社の物流コストを輸送費・保管費・荷役費・包装費・物流管理費に分け、構成比を出す。総額の比較より、どの費目が重いかを先に把握する。
  2. ② 同業種・同業態と比べる──全業種平均5.44%ではなく、自社が属する業種の数値(製造業5.37%、卸売業5.19%、小売業6.38%など)を基準にする。
  3. ③ 経年で自社を追う──他社比較以上に、自社の比率と機能別構成比を年次で追跡する。JILSの同一企業比較(2024年度5.16%)が示すように、母集団を固定した経年変化こそが施策の効果を映す。
  4. ④ 物流単価と販売単価を分けて見る──比率の上昇が、物流単価(物流量あたりコスト)の上昇によるものか、販売単価の下落によるものかを切り分ける。JILSは2024年度について、物流単価の増加が販売単価の伸びを上回り、比率が上昇する見通しを示している。

特に④は見落とされやすい。売上高物流コスト比率は分母(売上)と分子(物流コスト)の比であり、売上の伸び悩みでも比率は上がる。比率という一指標を額面通りに受け取らず、物流量あたりのコスト(物流単価)に分解して初めて、自社の物流が本当に高コスト化しているのかが判断できる。効率化の打ち手を体系的に検討する段階に入ったら、施策の地図として /topics/logistics-efficiency-menu を参照されたい。

比率上昇の構造的要因——2024年問題・運賃・人件費

物流コスト比率の上昇は、循環的な景気要因ではなく、是正の効きにくい構造要因に根ざしている。中核にあるのが、いわゆる「2024年問題」――トラックドライバーへの時間外労働の上限規制(年960時間)が2024年4月から適用されたことに端を発する一連の問題である。供給制約と適正運賃化が同時に進み、荷主側の物流コストを押し上げている。

運賃面では、国土交通省が2024年3月に新たなトラックの標準的運賃を告示し、運賃水準を平均約8%引き上げるとともに、荷役の対価や下請け手数料などを新たに加算した(2024年6月1日適用)。これは荷主から運送事業者への適正な価格転嫁を促す制度的なシグナルであり、荷主にとっては輸送費の上昇要因として直接効いてくる。

令和2年4月に告示したトラックの標準的運賃について、運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を新たに加算する。(国土交通省『新たなトラックの標準的運賃を告示しました』2024年3月)

値上げ要請の実態もこの構造を裏づける。JILS『2024年度物流コスト調査』では、物流事業者から値上げを要請された主なコストの種類として、輸送費を挙げた企業が150社で最も多く、荷役費がこれに続いた。輸送と荷役という人手依存度の高い領域で、人件費上昇が運賃・作業料に転嫁されている構図である。2024年問題の全体像と荷主に求められる対応は /topics/logistics-2024 で整理している。

つまり比率上昇の背後には、(1)ドライバー不足という供給制約、(2)標準的運賃の引き上げという制度的な適正化、(3)荷役を含む現場人件費の上昇、という三つの構造要因がある。いずれも一過性ではなく、当面は物流コストに上方圧力をかけ続けると見るのが妥当である。

コスト構造の可視化はCLOの最初の仕事

ここまで見てきた機能別内訳・業種別比率・構造要因を、自社の数値として組み立てて初めて、物流コストは「経営できる対象」になる。逆に言えば、機能別に分解されていない物流コストは、削減の打ち手も投資の優先順位も決められない。コスト構造の可視化は、物流統括責任者(CLO)が就任後にまず着手すべき仕事である。

2024年に成立した改正物流効率化法により、一定規模以上の特定荷主にはCLO(物流統括管理者)の選任と中長期計画の策定が求められる(全面施行は2026年4月)。中長期計画で効率化目標を掲げる前提として、現状のコスト構造が機能別・拠点別・品目別に見えていなければ、計画は数値の伴わない作文になりかねない。CLOの役割と職責の全体像は /topics/clo に、求められる人材要件は /topics/level に整理している。

可視化を一段進める鍵がデータの統合である。輸送管理システム(TMS)や倉庫管理システム(WMS)、会計・販売データに分散している物流費を、機能別・拠点別に名寄せして横断的に見える化することで、初めて費目間のトレードオフ(保管を増やして輸送を減らす等)を定量的に評価できる。こうしたデータ統合と分析の高度化は、AI・分析基盤の導入支援を行う「AX Boost」のような外部リソースの活用が有効な領域である。属人的な集計から、再現性のあるコスト管理へ移行することが、CLOの可視化を持続可能にする。

数値は一次資料の出典付きで——憶測値を出さない

物流コストを語るとき、最も避けるべきは出典のない数値である。「物流費は売上の◯%が相場」「輸送費は◯割」といった根拠の曖昧な数字は、経営判断を誤らせる。本稿で示した比率はすべて、JILSの物流コスト調査・国土交通省の告示という一次資料に基づく。自社の数値を外部と比較する際も、出典・調査年度・母集団(全業種か自業種か、同一企業比較か)を明示できることが、信頼できるコスト管理の最低条件である。

JILSの調査は年次で更新され、最新の速報値・概要版が毎年公表される。本稿の中心は『2024年度物流コスト調査』(売上高物流コスト比率5.44%)だが、比率の水準は年度ごとに動く。社内のベンチマークも、参照する公表データを毎年更新し、エバーグリーンに保つことが望ましい。

そして、コスト構造を握り、機能横断でデータと施策を統合できる物流役員の存在こそが、こうした管理を組織に定着させる。物流・SCM領域のリーダー人材の採用・登用をご検討の採用企業、ならびにキャリアをお考えの候補者の方は、KI Strategyのエグゼクティブサーチへの採用相談・候補者登録をご活用いただきたい。M&A・PMIに伴う物流統合の局面では、コスト構造の精緻な把握がディール価値を左右するため、M&A/PMIアドバイザリー「DD-AX」と物流人材サーチを組み合わせる支援も可能である。

References

  1. 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)『2024年度物流コスト調査報告書(概要版)の公表 〜売上高物流コスト比率は5.44%〜』 https://www1.logistics.or.jp/news/news-8216/
  2. 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)『2024年度物流コスト調査報告書【概要版】』PDF https://www1.logistics.or.jp/wp-content/uploads/2025/04/cost_report_20250428.pdf
  3. 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(JILS)『物流コスト調査』ページ https://www1.logistics.or.jp/news_cat/cost-research/
  4. 国土交通省『新たなトラックの標準的運賃を告示しました 〜運賃水準を8%引き上げるとともに、荷役の対価等を新たに加算〜』(2024年3月) https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000294.html
  5. 関連記事「食品・飲料業界のCLO|三温度帯・1/3ルール・共同配送と物流統括管理者の実務」(/topics/clo-food)
  6. 関連記事「荷主の物流効率化メニュー|モーダルシフト・パレット標準化・共同輸配送とCLOの選択」(/topics/logistics-efficiency-menu)
  7. 関連記事「物流の2024年問題と荷主の対応」(/topics/logistics-2024)
  8. 関連記事「CLOとは|物流統括管理者の定義・役割・採用」(/topics/clo)